大判例

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東京高等裁判所 平成5年(う)1376号 判決

被告人 岩佐茂雄

〔抄 録〕

論旨は、要するに、原判示第二の事実について、被告人は、宇井信治及び伊藤富朗を誘ってゲーム喫茶「楽天地」で同人らと強盗を行うことを共同したことはあるが、松木達夫にのみを突きつけていたのは伊藤であり、松木の負傷は、同人の手首に巻きつけたガムテープを切るのを手伝おうとした宇井がけん銃を暴発させたことによるものであるから、同人が責任を負うべきものであって、被告人がその責を負うべきいわれはないのに、被告人に対して強盗致傷罪を適用した原判決には法令適用の誤りがあり、それが判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。

そこで、検討するに、関係証拠によれば、

(1) 被告人は、宇井及び伊藤と共謀のうえ、ゲーム喫茶店でけん銃強盗をすることを企て、原判示第二のゲーム喫茶「楽天地」に赴き、まず、被告人が客を装って店内に入り込み、同日午前三時二〇分ころ、被告人が同店から出てくる機会に入れ違いにけん銃を携えた宇井と突きのみを携えた伊藤が共に覆面をして店内に押し入り、伊藤において同店従業員松木達夫の顔面に突きのみを突きつけて「金を出せ。」などと脅迫してその反抗を抑圧し、同人から現金約四七万円在中の財布一個(時価約一〇〇〇円相当)を強奪した。

(2) 店内にはもう一人の従業員がいたが、宇井においてこの従業員にけん銃を突きつけ、壁に向かって立たせていたところ、伊藤は右松木を壁際まで追い立てこの従業員の右側に同様にして立たせた。

(3) そして、伊藤において右松木の背後からその顔面にガムテープを二重に巻きつけたが、宇井は、この目隠しでは不十分であり、このままではそのころ再び店内に戻ってきた被告人の顔を松木らに見られ、自分達の犯行が発覚してしまうと考え、更に同人の顔面にガムテープを巻きつけようとして伊藤から右手でガムテープを受け取り、左手に持ち替えたけん銃の引き金に人差し指をかけ、その銃口を松木の腹部に向けて突きつけながら、そのガムテープを左手でちぎり取ろうとしたところ、人差し指に力が入って引き金を引いてしまい、けん銃を暴発させて松木に原判示の傷害を負わせた等の事実を認めることができる。

右事実によれば、被害者松木の受傷は、被告人及び宇井、伊藤の共謀による強盗の機会に、強盗の手段である宇井の右判示行為によって生じたことが明らかであるから、強盗の共同正犯である被告人についても強盗致傷罪の成立が認められることは当然であるといわなければならない。

所論は、宇井が誤ってけん銃を発射させた点をとらえて、これを過失行為とし、被告人が強盗致傷罪の責任を負ういわれはないというのであるが、宇井が引き金に指をかけながら、松木に対してけん銃を突きつけた行為は、誤射、暴発の場合も含めて弾丸発射による殺傷の危険性を強く帯有する行為であるから、脅迫行為に該当することは勿論、同人に対する有形力の行使として暴行に当たることも明らかであり、この暴行行為と松木の受傷との間に因果関係が認められる以上、宇井はもとより被告人についても強盗致傷罪が成立することは否定できないところである。したがって、所論指摘のように松木に対する弾丸発射が宇井の過誤によるものであり、かかる事態を被告人において予期していなかったにしても、この点は何ら被告人の責任を左右するものではなく、所論は採用の限りでない。よって、被告人に強盗致傷罪の成立を認めた原判決には法令適用の誤りはなく、論旨は理由がない。

(早川 八束 原)

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